サッカーにおけるスポーツ外傷予防プログラム導入の効果


key words:サッカー、スポーツ外傷予防、プログラム
【目的】
 中学生サッカークラブチームのコンディショニングを目的にサポートを行なっており、スポーツ外傷予防としてストレッチングやトレーニングなどの指導を行ってきた。しかしながら、競技特性や成長期の年代であることから、予期せぬ外傷や故障が絶えないのが現状であった。サポート開始から外傷件数の減少は認めるものの、より一層の予防を図るため、一昨年度よりFIFAの提唱する予防プログラムThe F-MARC11(以下The11)を導入し始めた。予防プログラムの効果をさらに引き出すために、第43回日本理学療法学会で発表した前十字靭帯再建術後の高校サッカー競技選手の協議復帰の一助となったフェルデンクライス・メソッドの動きによる気づき(以下ATM)を加えた予防プログラムを開始し、その効果を検証したので以下に報告する。
【対象と方法】
 本研究について十分に説明し本人及び保護者から同意を得た当クラブチーム在籍選手(平成19年度52名、平成20年度54名)を対象に4月から9月までの6か月間のスポーツ外傷件数を前年度の同時期と比較した。10月以降は3年生の進路の関係上、人数やサポートに違いが生じていることから除外した。試合など年間スケジュールは両年とも同様で指導者も同一である。The11は一昨年より導入しており、筋力やバランスを中心としたもので構成されている。改訂版として、昨年10月よりATMのメニュJFAフィジカル測定ガイドラインに準じたフィールドテストの結果もあわせて考察した。
【結果】
 19年度では全件数24件で、前年度の27件に対して1割強の減少を認めた。今回のATMプログラム導入後では17件で、前年比70%の発生件数となった。内訳では、足関節靭帯損傷や捻挫が10件から7件、大腿、下腿の肉離れや筋損傷が6件から3件と減少した。膝関節靭帯損傷、半月板損傷は3件から2件に減少したが、前年度にあった前十字靭帯損傷は0件であった。また、フィールドテストでは、アジリティテストの数値は向上したが、他の項目では顕著な向上は認めなかった。
【考察】
 前年度との比較により、ATMプログラム導入後に発生件数が減少したことから、スポーツ外傷予防に効果があったと考えられる。サッカーでの外傷はコンタクトプレー、オフ・ザ・ボールでの動きなど多彩な原因が関与している。ATMにより神経系の賦活がなされ、これらの身のこなしが変化したのではないかと考えられる。よって、従来のThe11で補えきれなかった身体の使い方を自分自身で学ぶことができたと考えられる。今後は、県内の中学生年代の各チームにも予防プログラムを導入し、どの要素に変化をもたらしたのか詳細に検証を進めたい。

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